ニコラス・メイヤー『シャーロック・ホームズ氏の素敵な冒険』

設定が抜群に面白い、贋作ホームズの最高峰

あらすじ

 重症のコカイン中毒におかされたホームズを救うため、ワトスン博士は一計を案じた。モリアーティ教授を囮に、はるばるウィーンまでやってきたホームズとワトスン。そこで出会ったのは学界から排斥されているジクムント・フロイト博士だった。
 やがて二人は、異郷の地で奇妙な事件に巻きこまれてしまう。

感想

 これはもう設定の面白さだけで5つくれてやれるだろう。
 『四つの署名』でホームズがコカインを愛用しているシーンはあったが、それによって重度のコカイン中毒になってしまったという設定は爆笑もの。その発端も本家の「最後の事件」に絶妙な絡みを見せている。
 ホームズのコカイン中毒を治すために、彼をわざわざウィーンまで連れ出すくだりといい、その時に明かされる「モリアーティ教授」の正体といい、前半部だけでお腹いっぱい。
 後半はオリジナルの事件になるが、オリジナルのホームズっぽい(データの後出しっぷりも含めて)作品になっていると思う。特に機関車を使った追跡劇が最高に面白い。★★★★★