カーター・ディクスン『殺人者と恐喝者』

そりゃバウチャーが「最低のイカサマ」って怒るわけだよ

殺人者と恐喝者 (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)

殺人者と恐喝者 (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)

あらすじ

 「でも―殺人だなんて」
 ヴィッキー・フェインは、夫アーサーが浮気相手を殺していたことを知らされる。叔父ヒューバートがその一部始終を見ていたのだというのだ。
 アーサーとヒューバート―殺人者と恐喝者の奇妙で危うい同居が、やがてフェイン家に悲劇をもたらすことになる。晩餐の余興として催眠術が披露され、術をかけられたヴィッキーはアーサーを短剣で刺殺してしまう。
 余興用のゴムの短剣が、誰も気づかないうちに本物にすり替えられていたのだ。

感想

 原題の”Seeing is believing”とは「百聞は一見に如かず」とも訳される。
 さて、それはともかく、事件の中心となる不可能犯罪の謎はシンプルで判りやすいし、その解決は盲点を突いていて面白い。第二の事件の方はやや怪しい部分があるのだが……。
 しかしそれよりもこの作品の最大の焦点である「仕掛け」。これはなんと評価すればいいのだろう。まあカーらしい、といえばらしい反則スレスレ、いやさすがにこれは反則か、とんでもない仕掛けだ。まあ個人的には少々アンフェアだろうが仕掛けが面白けりゃいいや、という立場なのでこういうのもある意味「アリ」だとは思う。
 もう少し上手く書けていればアンフェアとは言えなかったかもしれない。確かに問題作だわこりゃ。★★★☆☆