デレック・スミス『悪魔を呼び起こせ』(国書刊行会)

悪魔を呼び起こせ 世界探偵小説全集(25)

悪魔を呼び起こせ 世界探偵小説全集(25)

あらすじ

 ブリスリー村の旧家クウィリン家には家督相続人のみが代々受け継ぐ秘密の儀式があった。当主ロジャーは結婚を前に19世紀以来途絶えていた儀式の復活を思い立ち、周囲の心配をよそに、幽霊が出るという伝説の部屋<通路の間>に閉じこもった。
 その夜、厳重な監視下、内部から施錠された密室内で恐ろしい悲鳴を耳にして駆けつけた一同の前には、背中を短剣で刺されたロジャーの姿があった……

感想

 密室殺人の研究家である作者が、密室マニアとしての知識を結集した密室物の傑作です。こだわりがあったのは密室トリックだけだったらしく、ミステリとしての構造は二つの密室殺人が出てくるだけという至ってシンプルなもの。しかし、どちらの殺人に使われたトリックもよく考え抜かれた見事なものです。特に第一の殺人でのテクニックの限りを尽くしたトリックには「ここまでやるか」と呆れながらも感心しました。不可能犯罪ファンは必読の傑作です。