フリーマントル『消されかけた男』

エンタメの王道ながらもラストは強烈

消されかけた男 (新潮文庫)

消されかけた男 (新潮文庫)

あらすじ

 どこから見ても風采の上がらない英国情報部のチャーリー・マフィンはKGBの大物を逮捕したこともある腕利きだが、部長が交替してからは閑職に追いやられている。
 折しも、彼が捕まえたベレンコフの親友カレーニンが亡命を望んでいるとの情報が入った。
 チャーリーはどこか臭いところがあると警告したのだが……。

感想

 冴えない外見のチャーリー・マフィンが同僚や上司にいびられながらもプロとしてソ連の大物政治家の亡命事件に大活躍する。
 序盤にはチャーリーが情報部で閑職に追いやられている様が描かれるのだが、これがまるで普通の会社にもあるような嫌がらせだったりして妙なリアリティがある。
 中盤では軽んじられていたチャーリーが活躍し、やがて周りに一目置かれるようになる。
 この冴えない外見の男が目を見張るような活躍を見せるというのが(王道といえば王道なのだが)非常に痛快。
 中心となる亡命事件の展開は非常にスピーディーで読みやすい。そしてラストには意外などんでん返しも仕掛けてある。
 エンタメに徹しつつ意外性を盛り込んで見事に成功した快作。★★★★★