松本清張『ゼロの焦点』

本格謎解きと言えるのでは

ゼロの焦点 (新潮文庫)

ゼロの焦点 (新潮文庫)

あらすじ

 前任地での仕事の引継ぎに行って来る――
 そう言って新婚一週間で失踪した夫の行方を求めて、鵜原禎子は北陸の灰色の空の下を尋ね歩く。
 しかし、夫の行動を探ろうとする彼女の行く手を遮るように、次々と関係者が死体となって発見される。
 果たして自分の夫には何の秘密があったのか?

感想

 社会派と言われる清張だが、本作はガチガチの本格ものといっても充分に通用する作品だと思う。
 過去を隠して失踪した男、続出する被害者、調査によって徐々に明らかになる事実。北陸の情景を丁寧に描きつつ、徐々に事件を解きほぐしていく中盤は非常に面白い。
 そして何より最後には意外性があり、かつ合理的な解決がつけられる。散りばめられた伏線の回収の仕方も非常に上手く、本格ものの佳作として評価できる。★★★★☆