岡本綺堂『半七捕物帳(二)』(光文社)  12/14読了   

半七の第二巻。前巻の流れは健在

半七捕物帳〈2〉 (光文社時代小説文庫)

半七捕物帳〈2〉 (光文社時代小説文庫)

 短編集。個人的ベストは「津の国屋」
「鷹のゆくえ」
 事件が事件だからか、推理要素はほとんどなく捜査中心。やや行き当たりばったりな感じも。
「津の国屋」
 この中では珍しく怪奇的な事件が続発する。中盤のサスペンスは申し分ないし、解決も鮮やか。
三河万歳」
 当時の正月の風習が事件と上手く絡まっている。ミステリとしてはそれほどの出来ではないか。
「槍突き」
 本筋は割と単純なのだが、脇筋でいろいろな事件が絡まって複雑な作品となっている。
「お照の父」
 犯人の設定が江戸時代独特でユニーク。伏線の張り方も面白いと思う。
向島の寮」
 ホームズものにありそうな発端といい、展開といい、ミステリというよりは冒険小説の色が濃い。
「蝶合戦」
 いわゆる「首のない死体」で、これ自体は平凡。むしろそれ以外のトリックが良くできている。
「筆屋の娘」
 この中ではトリッキーな一品。ラストの追跡劇が面白い。
「鬼娘」
 これまた江戸時代独特の犯人設定が面白い。
「小女郎狐」
 狐の仕業と言われる事件の調査。ちょっとしたミスディレクションが効いている。
「狐と僧」
 僧侶が狐に化けたという発端が面白い。ただ解決はデータもほとんど提示されていないし、若干アンフェアか。
「女行者」
 予想通りの展開やあっさりとした解決など、ちょっと印象に残らない作品。
「化け銀杏」
 肝心の化け銀杏の謎があっさりと解かれてしまうのが不満。その後の錯綜が余計に感じてしまった。


 一でも書いたけれど、良くも悪くも日本版シャーロック・ホームズといった趣は健在。非常に楽しく読めるのだが、ミステリとしてはやや不満な作品もあるので★★★★☆