竹本健治『匣の中の失楽』

第四の奇書、とまでは行かないかな

匣の中の失楽 (講談社ノベルス)

あらすじ

　探偵小説好きの仲間内で「黒魔術師」と呼ばれていた男が奇妙な状況の下で殺される。状況から見て、犯人は仲間内の誰かだと思われた。
　仲間達は犯人を推理しようとするが、その内にメンバーの一人が書いた小説通りに殺人が起こっていることが明かされる……

感想

　黒死館、ドグラ、虚無に続く第四の奇書とも呼ばれる作品だが、個人的にはそこまでの作品とは感じなかった。印象としては『虚無への供物』の趣向をさらに徹底的に行なった作品という印象。
　とにかく全編推理とメタと衒学の目白押しで、出した端から次々と潰されていく推理や読者をとことん翻弄するメタ趣向は強烈。『虚無への供物』は余裕というか、どこか軽さのようなものを感じたが、こちらは暑苦しいくらいの若さと勢いを感じる。
　趣向は面白いし連綿と続く推理合戦もわくわくさせるが、伏線に乏しいせいか、最後まで解決したという印象がなかった。★★★★★