ロス・マクドナルド『ドルの向こう側』

変わらないテーマと質の高さ

ドルの向こう側 (ハヤカワ・ミステリ文庫 8-10)

ドルの向こう側 (ハヤカワ・ミステリ文庫 8-10)

あらすじ

 実業家の息子トムが脱走したので捜してほしい……少年院の理事の依頼を受けてアーチャーは調査を開始する。
 ところが、直後にアーチャーはトムが誘拐されたと知らされる。
 アーチャーは調査を進めるが、不思議なことにトムは謎の女と街に出没しているらしい。
 二人の居場所を掴んだアーチャーはそこで謎の女の死体を見つける……

感想

 ロスマクの作品の多くに見られるように、これもテーマは親子の血である。
 主人公となる少年や、彼を取り巻く人々の心の傷がリュウ・アーチャーというフィルターを通して荒涼とした世界を作り出す。この中盤の展開は相変わらず読み応え抜群。
 プロットの捻りや意外性のある解決も健在だが、今回のはやや分かりやすかったかな。
 それでも推理と小説を高いレベルで融合させている良作だと思う。★★★★☆