大阪圭吉『銀座幽霊』
戦前とは思えない短編集
- 作者: 大阪圭吉
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2001/10
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (10件) を見る
「三狂人」
精神病院から患者が逃げ出すという展開が面白い。ミステリとしてはミスディレクションの上手さを評価したい。
「銀座幽霊」
トリックは前例があるものだが、トリックに使われた物を最後の最後で上手く提示している。
「寒の夜晴れ」
いわゆる足跡トリックだが、ちょっとした工夫で不可能犯罪が組み立てられているのが重い白い。
「燈台鬼」
燈台を舞台にして起きた数々の不可解な出来事が非常に綺麗に解きほぐされる。犯人やトリックよりもラストの驚きと共にホワットダニットとしての秀逸さが光る作品。
「動かぬ鯨群」
トリックは大掛かりだが、それほど面白いわけではない。この中では印象が薄い作品。
「花束の虫」
それほど分かりにくい真相ではない。伏線の回収はそこそこ。
「闖入者」
「ドゥームドーフ事件」を彷彿とさせる真相が非常に面白い。しかしこんなこと起こるのか?
「白妖」
自動車消失という現象が面白い。そのトリックも必然性をもっているが、それゆえにちょっと真相のインパクトが弱いか。
「大百貨注文者」
ユーモラスな出だしがこの中では異彩を放つ。ミステリとしてはそこそこの出来か。
「人間燈台」
いわゆる失踪ものなのだが、その解決が強烈。ラストの独白も恐ろしい作品。
「幽霊妻」
なんとなく時代を感じる作品。個々のトリックも今ではちょっと成立しないかな。
書かれた時代を考えると凄い作品群なのだが、今ではそこそこの良作といったところか。★★★★☆