カーター・ディクスン『九人と死で十人だ』

カー中期の作品らしい、すっきりした一品

九人と死で十人だ 世界探偵小説全集(26)

九人と死で十人だ 世界探偵小説全集(26)

あらすじ

 第二次大戦中、ドイツ潜水艦の襲撃に脅えながらイギリスへ向かう商船エドワーディック号。その一室で、喉を切られた女の死体が発見された。現場には血染めの指紋が残されていて、犯人はすぐに判明するものと思われた。
 だが、調査の結果、驚くべき事実が発覚する。
 その指紋は船内の誰のものとも一致しなかったのだ。

感想

 題名は完全な誤訳。直訳すると「九人――そして死が十人を作り出す」だから『死で乗客がもう一人』とかいう感じになるはず。あるいは単純に『幽霊の指紋の謎』とか。
 それはともかく、いないはずの乗客というトリックは非常にシンプルながらも盲点を突いていて面白い。また、事件が錯綜しているに見えるのに、いざ明かされてみると非常にシンプルなプロットを上手く一捻りしたものだと分かる。
 カー中期の作品らしい佳作。ただドタバタや怪奇色がもう少し強くても良かったかも。まあ時節柄*1ということなんでしょう。★★★★☆

*1:1940年発表