ロバート・J・ソウヤー『イリーガル・エイリアン』

SFと法廷と本格ミステリの見事なコラボ

イリーガル・エイリアン (ハヤカワ文庫SF)

イリーガル・エイリアン (ハヤカワ文庫SF)

あらすじ

 人類は初めてエイリアンと遭遇した。アルファケンタウリに住むトソク族が地球に飛来したのである。
 ファーストコンタクトは順調に進むが、やがて思わぬ事件が起きる。
 トソク族の滞在する施設で、地球人の惨殺死体が発見されたのだ。しかも、逮捕された容疑者はエイリアン。
 世界が注目するなか、トソク族を被告人とした裁判が始まる。

感想

 序盤はいかにもSFといった感じの異星人とのファースト・コンタクトもので、ミステリらしさは欠片も感じられない。
 だが、殺人事件が起きた瞬間に様相が一変する。エイリアンを被告人にした裁判というトンデモ展開でありながら、アメリカの裁判制度の緻密な描写、裁判の展開の面白さ、その過程でエイリアンの生態が少しずつ明らかになる様子などは骨太な法廷ミステリとSFの調査の面白さを同時に体現していると思う。陪審員選考のくだりなど、ユーモラスなシーンもある。
 最後にはきっちりと本格ミステリ風のサプライズも仕掛ける作者の手腕に脱帽。★★★★★