ルース・レンデル『ロウフィールド館の惨劇』

超が付くほど濃厚なサスペンス

ロウフィールド館の惨劇 (角川文庫 (5709))

ロウフィールド館の惨劇 (角川文庫 (5709))

あらすじ

 カヴァデイル家に新しくやってきた召使・ユーニスは有能だった。家事を完璧にこなし、ロウフィールド館をチリ一つなく磨き上げる。しかし彼女は何事にも無感動であった。
 そのユーニスは怯えていた。自分の秘密が暴露されることを。
 ついにその秘密があばかれたとき、すべての歯車が惨劇に向けて回転をはじめる。

感想

 レンデルのサスペンスの作り方の上手さが存分に味わえる傑作。
 衝撃的な一文から物語は幕を開け、「石のような女」ユーニス・パーチマンがカヴァデイル家の四人を惨殺するまでの過程が克明に描かれていく。ただ、言われるほど異常心理ものとして良くできているとは思えない。
 むしろこの作品の読みどころは、カヴァデイル家の人々やユーニスがいくつもの運命の分岐点で破滅への道を突き進んでいく様子だろう。作者の「こうすれば惨劇は防げたのに」という描写によって、彼らがまるで蟻地獄にはまるように惨劇へと飲み込まれていくような錯覚に陥る。これが非常に強烈だ。
 濃厚なサスペンスをもつ傑作。★★★★★