山田風太郎『夜よりほかに聴くものもなし』
作者の心の闇を見透かすような視線が凄い
夜よりほかに聴くものもなし サスペンス篇―山田風太郎ミステリー傑作選〈3〉 (光文社文庫)
- 作者: 山田風太郎
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2001/05
- メディア: 文庫
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「鬼さんこちら」
死体に追われる男、というシチュエーションがもの凄い。ラストの捻りも秀逸。
「目撃者」
主人公の追い込まれ方が非常にリアルで怖い。そしてあまりにもねじくれたラストが衝撃的。
「足音」
段々追い詰められていく主人公、そして救いのないラスト。恐ろしい作品だ。
「とんずら」
不可解な出来事の意味がラストで明かされる。この中ではなんとなく笑える作品。
「飛ばない風船」
サスペンス風の倒叙作品。倒叙ならではのオチが上手く効いている。
「知らない顔」
凶悪犯と瓜二つの主人公の心の動きが非常に不気味。
「不死鳥」
本当の不死鳥は男か女か。最後まで二人の妖しい心の動きに翻弄される。
「ノイローゼ」
この中ではかなりサイコ寄りの作品。そのためかラストが異常に怖い。
「動機」
被害者も手段も謎のまま、殺人の動機が段々と積み重なっていく様子だけが描かれる様子が面白い。ラストの急展開には意表を突かれた。
「吹雪心中」
ほんのちょっとした過ちがカタストロフィを引き起こす。非現実的な展開なのに、男と女の心理の変化の仕方に震えるほどのリアリティがある。
「環」
結構面白い構図だが、これはどこかで見たような……。
「寝台物語」
捻れた三角関係がもたらすサスペンスと最後の最後に見せる逆転。
「夜よりほかに聴くものもなし」
連作短編。いずれも老刑事・八坂が主人公をつとめる。異常ながらも引き込まれてしまう殺人者達の動機とそこから生まれる犯行方法や被害者像などが非常に強烈。
作者の人間の心への目線とサイコ・サスペンスが上手く結びついていると思う。★★★★☆