山田風太郎『太陽黒点』

 これぞ「怪作」の名にふさわしい

あらすじ

 貧乏学生鏑木明の借金返済のために一度だけ体を売ってお金を稼いだ土岐容子。彼女はそのためにある人物から恥辱を受け、自殺を考える。彼女に恋心を抱いていた小田切はそれを知り、彼女のためにその人物を殺害し、死の道を選ぶ。たった一度の過ちが若い男女を破滅させた事件であったが……。

感想

 若い男女が破滅へと突き進んでいく犯罪小説の形で物語が進んでいくが、終盤で様相が一変する。そこへ至って初めて、この作品の「真犯人」の頭の良さと、それを上回る冷酷さが際立ってくる。それだけ戦慄させられるラストが待っている。
 この作品のトリックのスケールの大きさは凄いが、その伏線があからさまに書かれていたことも凄い。つかみ所のない茫漠とした動機もあって不思議な印象を残す怪作。★★★★★