柄刀一『OZの迷宮』

 不可能犯罪短編集の傑作。

OZの迷宮 (光文社文庫)

OZの迷宮 (光文社文庫)

 非常に面白い趣向を持った短編集。個人的ベストは「絵の中で溺れた男」
「密室の矢」
 トリックはありがちだが、一捻りされた事件の様相が上手く真相を隠している。
「逆密室の夕べ」
 全体の構図は簡単に見えるが、トリックは一筋縄では行かない。
「獅子の城」
 身内の容疑を晴らすために活躍する名探偵、しかし最後で予想外の結末を見せる。プロットの凄さが光る作品。
「絵の中で溺れた男」
 密室の中、絵の中の川で溺死、という謎がとても魅力的。それをあの手この手を駆使して実現してしまうのだから凄いもの。
「わらの密室」
 冒頭の倒叙形式が最後にとんでもない衝撃を見せる。見事な作品。
イエローカード
 「五十円玉二十枚の謎」を彷彿とさせる事件。キレのあるロジックが炸裂する。
ケンタウロスの殺人」
 ケンタウロスのような死体と不可解な犯罪。伏線を丁寧に繋いで見事な解決を見せる。
「美羽の足跡」
 この中では随分雰囲気の違う作品。トリックもなんだか浮世離れしている。


 全作品とも非常にレベルが高いが、それに加えて短編集としては特異な趣向も眼を引く。★★★★★