都筑道夫『三重露出』

 多分ちょっと過剰なんだと思う

三重露出―都筑道夫コレクション パロディ篇 (光文社文庫)

三重露出―都筑道夫コレクション パロディ篇 (光文社文庫)

あらすじ

 滝口正雄が翻訳しているのは"ニンジュツ"修行に励む外国人ヒーローや秘術を繰り出す"くノ一"軍団が登場するスパイ小説。ところがその作中に、二年前に変死した女友達の名前が現れた。
 原著者は事件について何か知っているのか? 不審を感じた滝口は調査に乗り出す。

感想

 『三重露出』という日本を舞台にした翻訳ミステリと二年前の事件の調査が平行して描かれる。『三重露出』の方はなんだか怪しげなスリラーといった感じだがこれはこれで結構面白く読める。
 一方、二年前の事件の方の調査だが、趣向は非常に面白い。しかし、漠然とした違和感が最後の最後まで抜けなかった。作者の狙いは分かるのだが、どうもやりすぎというか、趣向に拘りすぎて歪んでしまったような気がする。どうにも居心地の悪い感じが拭えない★★★★☆


以下はその他の短編
「カジノ・コワイアル」
 007のパロディ。次々000-××が出てくる展開に笑ってしまった。ラストのオチもいい味だ。
「ジェイムズ・ホンドの大冒険」
 こちらは『ゴールド・フィンガー』のパロディ。……な、なんてゴールドなオチなんだっ!
「銀座の児雷也
 こちらはエラリー・クイーンパスティーシュ。ダイイングメッセージものだが、日本特有というのが面白い。
ポアロもどき」
 ポワロに扮するバーの主人とその妻の探偵譚。旦那も旦那だが、文句言いつつ奥さんの方も随分ノリノリですね(笑)。オチもなかなか。
「半七もどき」
 捕り物帳もどきの一編。当時の風俗活写が主でパスティーシュはむしろ脇役。事件としてはそれほどのものでもないか。