泡坂妻夫『湖底のまつり』

 全体的に浮世離れしてますね

湖底のまつり (創元推理文庫)

湖底のまつり (創元推理文庫)

あらすじ

 傷心の旅に出た香島紀子は、山間で増水した川に流されてしまう。ロープを投げ、救い上げた埴田晃二という青年とその夜結ばれる。
 翌朝彼の姿は消えていた。そして最後の村祭りで賑わう神社で、紀子は晃二が一月前に毒殺されたことを知らされる……

感想

 泡坂妻夫というと、『11枚のとらんぷ』などのちょっととぼけたユーモアが大好きなのだが、この作品ではユーモアは鳴りを潜め、幻想的な発端からゆるやかに話が展開していく。
 細やかな描写に浸っているうちに心地よく騙される作品だが、発端の謎の扱いが少々不満。ミステリというよりは幻想を絡めた恋愛小説に近い作品だろう。小説としての出来はいいが★★★☆☆