連城三紀彦『私という名の変奏曲』

 うおう! こりゃ傑作だ!

私という名の変奏曲 (新潮文庫)

私という名の変奏曲 (新潮文庫)

あらすじ

 「今日、私は死ぬ。私を殺したいと思っている人間が七人いて、その中のだれかに殺されることになるのだ」
 ファッションモデルとして世界的に成功した美織レイ子がマンションの一室で死体となって発見された。それは、次々と起こる変死事件の前奏曲に過ぎなかった……。

感想

 非常に巧緻な傑作。
 冒頭にまず「誰か」による殺人が描かれるが、その後、事件はとんでもない方向に展開する。
 各自の独白によって、まるで七人の容疑者全員が殺人を犯したかのような異様な感覚と、美織レイ子の特異な人物像に翻弄されながら一気にラストに突き進む。
 解決は決して複雑ではなく、むしろ単純なはずなのだが、特異な設定と人物像、そして文体によって巧妙に隠されている。★★★★★