ロス・マクドナルド『一瞬の敵』

 アニエルさんに敬礼!

一瞬の敵 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

一瞬の敵 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

あらすじ

 ハイスクールに通うごく普通の少女、サンディが突然家出した。両親から依頼を受けたアーチャーは前科者の恋人の所にいる彼女を見つけるが、彼らは隙を見て逃げ出してしまう。二人は何を考え、どこに向かったのか? アーチャーは二人を追い続ける。

感想

 家出娘の捜索から始まった事件がどんどん大きくなっていくが、アーチャーが常にサンディのことを考えながら動いているのが印象的。彼がこれまでの傍観者的な立場を捨て、二人の若者のために必死の活動を展開しているように見えた。
 中盤では主犯となった少年の過去を徐々に遡っていくことで、彼の家系の背負った不幸が段々と浮かび上がってくる過程が非常に上手い。その不幸をとことんまで追い詰めた末の、終盤にどんでん返しの連発は非常にトリッキーで面白かった。
 さすがに『さむけ』には及ばないものの良作であることは間違いない。★★★★☆