ジョン・ディクスン・カー『ハイチムニー荘の醜聞』

 あれ、これ歴史ミステリだっけ

ハイチムニー荘の醜聞 (ハヤカワ・ミステリ文庫 カ 2-14)

ハイチムニー荘の醜聞 (ハヤカワ・ミステリ文庫 カ 2-14)

あらすじ

 「妹二人を結婚させるように父を説得してほしい」という奇妙な依頼を受けてハイチムニー荘を訪れたクライヴ。
 彼はそこで友人の父親マシューから驚くべき話を聞かされた。彼の子供の一人は、実は昔自ら死刑に追い込んだ殺人犯の子供だというのだ。そしてクライヴが誰が殺人犯の子供かを尋ねた瞬間、弾丸がマシューの頭を貫いた。

感想

 カーの歴史ミステリである。が、あまり歴史ミステリという感じはしない。
 確かにヴィクトリア朝の人々の活写やジョナサン・ウィッチャーという実在の人物を探偵役としているところなどは面白いが、人間関係をテーマとしているため、ミステリとしての構造はむしろフェル博士の後期作品に近いように思う。
 登場人物間のやりとりに手掛かりやミスディレクションを仕掛けるあたりはやはり上手い。ただちょっと引っ張りすぎな気もする。中編くらいで十分だと思うのだが……。★★★★☆