芦辺拓『時の密室』

 この読みやすさが意外だった

時の密室 (講談社文庫)

時の密室 (講談社文庫)

あらすじ

 明治政府の雇われ技師エッセルは謎の館で偶然死体を発見するが、その後死体は不可解な消失を遂げる。
 昭和45年、当時医大生だった氷倉は河底トンネルでいるはずのない友人の死体に遭遇した。
 現代の密室殺人を追う森江春策の前に、二つの事件が甦る。三つの事件のつながりは?

感想

 大分前に『殺人喜劇の十三人』を読んだ時には「えらく読みにくいな」と思って、その後長らく芦辺拓の作品は読んでいなかった。
 だが、この作品は非常に読みやすかった。パートごとに微妙に文体が違ったりするが、どのパートもサクサク読み進めることができた。
 事件も明治のお雇い技師エッセル氏の遭遇した事件、昭和の密室殺人、現代の事件など盛り沢山で、おまけにどれも非常に凝った出来だ。
 欠点を挙げるなら、各事件のつながりが少々弱く、全体を通してみた時にあまり盛り上がってないような気がしてしまうことだろうか。しかし十分面白い。★★★★☆