仁木悦子『猫は知っていた』

 これぞ古典。これぞ傑作。今でも十分通用する

あらすじ

 仁木雄太郎・悦子の兄妹は郊外にある箱崎医院の二階に間借りして、院長の末娘のピアノの家庭教師をすることになった。ところが引越し早々院内で連続殺人事件が起きてしまう。推理小説好きの二人は、素人探偵となって事件の捜査を始める……

感想

 初代*1乱歩賞受賞作。50年近く前の作品だが、小説としてもミステリとしても全く古さを感じさせない。
 主人公の仁木雄太郎・悦子兄妹の息のあった掛け合いや二人の捜査の描写は読んでいて微笑ましい。ミルンの『赤い館』の明るく楽しい雰囲気に似ている。
 事件はかなり錯綜するが、よく練られた伏線、細かいトリックの組み合わせの上手さなどには驚かされてしまった。今でも十分通用する傑作だ。★★★★★

*1:正確には第三回。第一回は中島河太郎氏、第二回は早川書房が受賞したとのこと