ドロシー・L・セイヤーズ『五匹の赤い鰊』

 作風ががらりと変わってた

五匹の赤い鰊 (創元推理文庫)

五匹の赤い鰊 (創元推理文庫)

あらすじ

 スコットランドの田舎町で嫌われ者の画家の死体が発見された。絵を描くのに夢中になって崖から転落したように見えたが、ピーター卿はこれが殺人であると看破する。容疑者は6人。いったい誰が犯人なのか?

感想

 本を何冊か読んでいると、どうしても相性の悪い作家というものが出てきてしまう。自分にとってはセイヤーズが「相性の悪い作家」になる。これまで『誰の死体?』『雲なす証言』『毒を食らわば』『ナイン・テイラーズ』と読んできたのだが、『ナイン・テイラーズ』以外はあまり好きになれなかった。
 しかし、後期の第一作となるこの作品はかなり面白かった。これまでと違ってピーター卿が一歩引いた形だったためか、登場人物たちのやりとりや行動が生き生きと描かれている。ミステリとしても、容疑者達がそれぞれ秘密を抱えていることで事件が非常に複雑になっていて重厚さが出ている。序盤に読者への挑戦のようなものが挟まれているのも面白い。
 セイヤーズとの相性の悪さはピーター卿のせいか、と悟った一作。★★★★☆