ジョン・ディクスン・カー『毒のたわむれ』

 唯一のパット・ロシター登場作。

 家庭の中で起こる連続毒殺事件という一風変わった作品だが、なかなか面白かった。ほとんどの場面が舞台となるクエイル家の中で展開されるため、あまり派手さは感じられないが、その分クエイル家の澱んだ雰囲気がよく出ていたと思う。
 肝心の事件だが、カー得意の密室こそ出てこないが、異様な雰囲気の中で展開される連続毒殺事件の真相はよくできていたと思う。意表を突いたロジックが炸裂したり、効果的なミスディレクションがあったりして、(こう言ってはなんだが)フーダニットとしての質が高かったのがちょっと意外だった。★★★★☆