「法月綸太郎の本格ミステリ・アンソロジー」法月綸太郎・編(角川文庫)

法月綸太郎の本格ミステリ・アンソロジー (角川文庫)

法月綸太郎の本格ミステリ・アンソロジー (角川文庫)

 アンソロジー。個人的ベストは「誰がベイカーを殺したか?」(エドマンド・クリスピン&ジェフリー・ブッシュ)
「ミスター・ビッグ」(ウディ・アレンえー、あー……これは真面目に読んじゃいけないな(苦笑)。
「はかりごと」(小泉八雲ショートショート、おまけに「呪い」を扱いながら、見事な合理が描かれている。切れ味鋭い作品。
「動機」(ロナルド・A・ノックス)ホワットダニットのような味わいのホワイの謎解きが非常に面白い。
「消えた美人スター」(C・デイリー・キング)密室からの消失もの。安楽椅子探偵らしいディスカッションの応酬がスリリング。状況がガチガチの密室なだけあって、解決も非常にテクニカルで面白い。
「密室」(ジョン・スラデック密室講義もどきの楽屋オチ連発に思わず笑ってしまった。ただ、ラストが意味不明だ。
「白い殉教者」(西村京太郎)トリックもなかなかのものだが、それ以上にプロットの捻り方が面白い。まさに本格、といった感じの作品。
「ニック・ザ・ナイフ」(エラリー・クイーンクイーン自身が原案を出したということで、よく練られた作品になっていると思う。
「誰がベイカーを殺したか?」(エドマンド・クリスピン&ジェフリー・ブッシュ)ラストで思わず「畜生!」と言ってしまうような見事な騙しの作品。短いながらも傑作だと思う。
「ひとりじゃ死ねない」(中西智明朗読型犯人当てらしい、捻りに捻った作品。色々なところに罠が仕掛けてあって、何度も背負い投げを喰らってしまった。
「脱出経路」(レジナルド・ヒル淡々と連なる囚人の手記が最後に意外な形に変わる。脱出トリック自体もよくできていると思う。
「偽患者の経歴」(大平健)タイトルが種明かしになっているが、それでも読み応えはかなりのもの。
「死とコンパス」(ホルヘ・ルイス・ボルヘス犯人の用意したトリックがある作品を思い出させるが、あまり上手くいっている気がしない。もう少し長い方がいいと思う。
 選者のセンスが素晴らしい。それもあって★★★★★