霧舎巧『名探偵はもういない』(講談社ノベルス)   

名探偵はもういない (講談社ノベルス)

名探偵はもういない (講談社ノベルス)

 もともと細かく伏線を繋いでいくのを得意とする感じの作者だが、この作品ではそれが見事に成功している。雪の山荘を舞台に次々と事件が起きるが、それら全ての出来事から伏線を丹念に集めていって、複雑な事件の構造をだんだんと明かしていく解決シーンは非常によくできていると思った。
 しかし最も良かったのは、最後の最後で思いもかけない解決とともに感動的な幕切れを用意してくれていることだろう。「あかずの扉」とのリンクがあるのもファンには嬉しいところ。霧舎のベスト作品だろう。★★★★★