倉知淳『猫丸先輩の推測』(講談社文庫)

猫丸先輩の推測 (講談社文庫)

猫丸先輩の推測 (講談社文庫)

 
 実は初の猫丸先輩の短編集。個人的ベストは「夜届く」
「夜届く」猫丸先輩の与太話が解決場面での意外な逆転に結びつく。そこで示される視点の転回も非常に面白い。
「桜の森の七分咲きの下」さりげない伏線と絶妙な視点の転回がうまく結びついている。
「失踪当時の肉球は」ハードボイルド風ペット探偵の渋い独白と猫丸先輩の対照が笑える。ただ、猫丸先輩の展開する推測はやや分かりやすいか。
「たわしと真夏とスパイ」なんとなくおかしいな、と思いながらも最後まで分からなかった。一つ一つ不自然な点を挙げられていって、丁寧な推理が展開されるのが良かった。
「カラスの動物園」一種の不可能状況だが、盲点を突いた解決はよくできていると思う。葉月のひねり出す解決も楽しい。
「クリスマスの猫丸」クリスマスならではのネタだろう。説得力のある推測を展開しながらも思わぬ所に着地するのは上手い。
 登場人物たちが皆一風変わっていて笑える。いいねいいね。★★★★☆