ジョン・ディクスン・カー『雷鳴の中でも』(ハヤカワミステリ文庫)

雷鳴の中でも (ハヤカワ・ミステリ文庫 カ 2-4)

雷鳴の中でも (ハヤカワ・ミステリ文庫 カ 2-4)

 フェル博士ものの後期作品。この頃のカーの作品は人間関係をミステリに織り込んだものが中心らしく、登場人物の間の不穏なやりとりはミステリっぽくていい。その代わり(かどうかは知らないが)事件の状況はあっさりしていて、初期のガチガチの密室などとはまた違ってきている。
 それでもきっちりと不可能状況を演出しているし、トリックも面白い。ただ、やはりメインは人間関係を中心に置いたプロットの捻りにあるのだろう。なかなか面白かった。フェル博士のライバル探偵としてハサウェイ卿が出てくるが、どうもチグハグな感じを受けるのが残念。★★★★☆