泡坂妻夫『奇術探偵曾我佳城全集<秘の巻>』(講談社文庫)
- 作者: 泡坂妻夫,松田道弘
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2003/06/13
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 3回
- この商品を含むブログ (16件) を見る
「空中朝顔」朝顔のトリックの面白さと人情話の合体。佳城は完全に脇役だが、それがいい。
「花火と銃声」一風変わったフーダニットが味を出している。トリックはよくあるものだが、そこへ導く伏線のキレが素晴らしい。
「消える銃弾」弾丸受け止め術に使われるトリックの数々が殺人のトリックと見事に組み合わさって、プロットの捻りを生んでいる傑作。
「バースデイロープ」この中では小品か。それでも細かいトリックなどに冴えを見せる。
「ジグザグ」「胴体のない死体」という変り種だが、ホワイへの見事な解答にはあっと言わされた。
「カップと玉」暗号もの。奇術好きとしては有名な「カップと玉」と「数当てカード」のコラボレーションが楽しめた。
「ビルチューブ」佳城の弟子たちのマジックが笑える。ミステリとしてはミスディレクションが見事。
「七羽の銀鳩」とぼけた感じのユーモアが面白い一編。と思ったら、最後に意外な方向からの一撃がやってくる。それにしてもホテルの人、鼠の自慢をしてどうする(笑)。
「剣の舞」この中ではやや異色の犯人像を持つ作品。主人公の造型といい、他と毛色が違いすぎたせいか、どうも最後まで乗れなかった。
「虚像実像」不可能状況だが、解決の仕方が奇術的。この道具をこう使ったか、という面白さがある。
「真珠夫人」「真珠夫人」の逆説的な行動が事件を錯綜させるのが面白い。
一部合わない作品もあったが、ハイレベルな作品集。さすが、というべきか。★★★★★