伊坂幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』

謎解きの後がこの作品の真骨頂

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

あらすじ

 引っ越したアパートで出会ったのは、悪魔めいた印象の長身の青年。
 初対面の僕に、彼はいきなり「一緒に本屋を襲わないか」と持ちかけてきた。
 彼の目標は……たった一冊の広辞苑
 そんなおかしな話はないと思っていたのに、なぜか僕は決行の夜、モデルガンを手に書店の裏口に立っていたのだ。

感想

 はっきり言ってしまうと、ミステリ的には全然大したことのない作品である。
 ちょっと気の利いたトリックが仕掛けられてはいるが、それもありがちと言っていいものだし、「現在」で展開する事件はちょっと風変わりだが、「二年前」の事件は平凡といってもいいくらい。
 ただ、最後の解決において、物語の主役(主人公ではない)が二つの物語を繋げ、その過程で自分の変化を吐露していくシーンは胸に来た。
 軽快ながらもそこで終わらせない一作だと思う。★★★☆☆