三津田信三『首無の如き祟るもの』

「07年最大の衝撃作」は伊達じゃない

首無の如き祟るもの (ミステリー・リーグ)

首無の如き祟るもの (ミステリー・リーグ)

あらすじ

 奥多摩の旧家・秘守家に伝わる儀式、「婚舎の集い」。23歳になった秘守家当主の長寿郎が、三人の花嫁候補の中から一人を選ぶのである。
 しかしその最中、花嫁候補の一人が首無し死体で発見される。
 犯人は現場から消えた長寿郎なのか?
 そんな中、人々の混乱を嘲笑うかのように、二つ目の首無し死体が現れる……

感想

 これは凄い!
 題名通りに本格ミステリの基本とも言える「首の無い死体」をテーマに、戦前に起きた十三夜参り事件、戦後の媛首山殺人事件の二つの事件が起きる。共に複雑な事件ではないのだが、個々の謎が絶妙に絡み合って容易に底を割らせない。
 それでいながら探偵役自身が列挙した30以上の謎が「たった一つのある事実」だけで鮮やかに解き明かされ、見事な構図が立ち上がる解決シーンは圧巻。
 そしてさらに、その構図の上で繰り返される二重三重のどんでん返し。本格ミステリの大傑作と言っていいだろう。★★★★★