ウィリアム・ブリテン『ジョン・ディクスン・カーを読んだ男』

「読んだ」シリーズ登場!

ジョン・ディクスン・カーを読んだ男 (論創海外ミステリ)

ジョン・ディクスン・カーを読んだ男 (論創海外ミステリ)

 短編集。個人的ベストはやはり「ジョン・ディクスン・カーを読んだ男」
「ジョン・ディクスン・カーを読んだ男」
 再読。やっぱりこれはパロディの傑作。今回再読して、伏線がしっかり張られていることにも気づいた。
エラリー・クイーンを読んだ男」
 クイーンへのパスティーシュ。クイーンばりのロジックはもちろん、読者への挑戦状まで入ってるという楽しい作品。
レックス・スタウトを読んだ女」
 ネロ・ウルフ並に太った女が素人探偵として事件を解決する。おまけにアーチーのような助手までいる。解決は面白いが伏線が乏しいか。
アガサ・クリスティを読んだ少年」
 ポワロの真似をする少年が微笑ましい。事件はクリスティの某作のパロディなのだが、パロディの仕方が面白い。
コナン・ドイルを読んだ男」
 ドイルのホームズものを読み込みながらの暗号解読もの。ラストはまさかのダジャレオチ。
「G・K・チェスタトンを読んだ男」
 ブラウン神父ばりに名推理を展開する神父が登場する。伏線の張り方の上手さもあるが、手掛かりを掴んだ瞬間の主人公がブラウン神父にそっくりなのも面白い。
ダシール・ハメットを読んだ男」
 ある人物が隠した『マルタの鷹』を探すと言う話だが、それだけでハメットはあまり関係しない。暗号ものとしてもやや微妙。
ジョルジュ・シムノンを読んだ男」
 メグレ警視のように人間の心理を読んで犯罪を見抜く……のだが、メグレものを読んでないので何とも言えない。
「ジョン・クリーシーを読んだ少女」
 イギリス英語の俗語を使ったダジャレもの。英国俗語に詳しいアメリカの女の子という設定がなんだかおかしい。
アイザック・アシモフを読んだ男たち」
 「黒後家蜘蛛の会」のパロディ。原作そのままの雰囲気と暗号解読が楽しい。
「読まなかった男」
 隠れテーマとしてポオの短編が登場する、サスペンスフルな一編。
「ザレツキーの鎖」
 元刑事と奇術師の突飛な賭けから意外な展開を見せる。ちょっとした捻りもあって短編としてよくまとまっている。
「うそつき」
 どことなく乱歩の「心理試験」を思い出させる、一風変わったプロットの作品。
「ブレット街イレギュラーズ」
 「読んだ」シリーズではないが、「ベーカー街イレギュラーズ」のパロディになっている。真相はそれほど意外ではないが、伏線の張り方はよくできている。


 パロディは「カーを読んだ男」一作で、あとはパスティーシュの趣が強い。それでも楽しく読める。★★★★☆