石持浅海『月の扉』

コア部分が破壊力不足

月の扉 (光文社文庫)

月の扉 (光文社文庫)

あらすじ

 沖縄・那覇空港で、乗客240名を乗せた旅客機がハイジャックされた。犯行グループ3人の要求は、那覇警察署に留置されている彼らの「師匠」を空港まで「連れてくること」。
 ところが、機内のトイレで乗客の一人が死体となって発見され、事態は一変。
 極限の閉鎖状況で犯人探しが始まる。

感想

 解説の杉江松恋氏は「プリコラージュ」と表現されていたが、その表現を借りると、この作品はコラージュ全体が印象に残らなかった。
 座間味君の行動や解決における論理性、犯人の行動など個々の要素は良いのだが、全体の中心をなす「師匠」石嶺のカリスマ性がほとんど伝わってこない*1。しかし作中では、登場人物の大部分が「師匠」石嶺のカリスマ性を前提とした思考や行動をとっている。
 そのため、最後に登場人物達のいろいろな「動機」が明かされた時に、何だか宙ぶらりんになってしまったように感じてしまった。★★★☆☆

*1:ほとんど出てこないからしょうがないともいえるが