エドガー・アラン・ポオ『ポオ小説全集Ⅰ』
バラエティに富んだ短編集。
- 作者: エドガー・アラン・ポオ,阿部知二
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1974/06/28
- メディア: 文庫
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「壜のなかの手記」
海洋航海をテーマにした壮大な幻想小説。巨大な船の描写が非常に印象的。
「ベレニス」
主人公の偏執的な性格が恐るべき筆致で描かれる。ラストも強烈。
「モレラ」
これといい「リジイア」といいどうしてポオの女性は主人公よりも聡明で大人びているのだろう。
「ハンス・プファアルの無類な冒険」
気球で月に旅行した男、というナンセンスな話を理屈で丸め込んでしまう。やや強引さも感じるが、そこが面白い。
「ボンボン」
哲学者兼料理人のところに悪魔が訪ねて来るのだが……悪魔がやたら紳士的で笑える。
「息の喪失」
呼吸ができなくなった男の物語、という笑えるナンセンスもの。
「名士の群れ」
「鼻理学」や鼻の高さで偉くなるという世界観は爆笑もの。ただオチが意外に上手く決まっている。
「メルツェルの将棋差し」
実際にあったチェスを指すロボットに関する考察。ミステリの謎解きに近い風味を持っている。
「メッツェンガーシュタイン」
主人公のメッツェンガーシュタインの恐怖と執念が非常にリアルに感じられる。序盤からラストまで怪奇風味で彩られた作品。
「鐘楼の悪魔」
時計に支配されているという点では現代人はこの作品の登場人物を笑えないような……皮肉の効いた作品。
「使いきった男」
素晴らしいショートショート。中盤の能天気な展開からラストのオチへの急展開が凄まじい。タイトルセンスも秀逸。
「アッシャー家の崩壊」
アッシャー家の陰鬱な雰囲気の描写が素晴らしい。終盤のホラーな展開もよくできている。
「ウィリアム・ウィルソン」
もう一人のウィリアム・ウィルソンとは結局何だったんだろうか。それを考える……ほどのものではないか。
怪奇小説からミステリ風のもの、ナンセンスなものや「奇妙な味」のものもあって非常にバラエティに富んでいる。★★★★★