都筑道夫『退職刑事5』

変り種とオーソドックスな快作が同居してる

 短編集。個人的ベストは「遅れた犯行」
「落葉の墓」
 捜査の進捗によって徐々に手がかりが現れるため、推理の余地はあまりない。ところが最後まで来て見事な一撃が入る。
「凧たこあがれ」
 趣向こそ変わっているが、この中では初期作品に近く、伏線を丁寧に拾って解決にもっていっている。
「プールの底」
 プールで刺殺、凶器なしという複雑な状況を、ちょっとした視点の転換で打開する解決が面白い。
「五七五ばやり」
 暗号ものだが、最後に変な捻りをもたせている作品。
「闇汁会」
 ミステリでは時々出てくる、一風変わった構図の事件。しかし書き込みが少なくてやや説得力に欠ける気がする。
「遅れた犯行」
 自白の後の犯行という奇妙な状況設定が抜群。自白の理由も非常に面白いと思う。
「あくまで白」
 犯人当てよりも主人公の刑事がなぜ有力容疑者を白だと思うか、という謎の方がメインか。ただ、ちょっと物足りない。
「Xの喜劇」
 事件の質といいラストの捻り具合といい、割と軽めの一品だがかなりの異色作。


 面白い事件もあったが、全体としては★★★★☆