上半期ベスト3

 忘れないうちに上半期のベスト3まとめよう。
 ちなみにこの半年で読んだのは76冊。

<海外作品>
1位 リチャード・マシスン『奇術師の密室』
2位 クレイグ・ライス『眠りをむさぼりすぎた男』
3位 ルシアン・ネイハム『シャドー81』
次点 アイザック・アシモフ鋼鉄都市

 1位は奇術道具満載の部屋の中で登場人物たちが騙し合いを展開する傑作。圧倒的な量のどんでん返しをぶち込んでのサプライズの連発が最後まで楽しめる。
 2位はライスがマイケル・ヴェニング名義で発表した作品。ライスとは思えない濃度の高いサスペンスと意外な真相が待ち受けている、トリッキーな佳作。
 3位は空前絶後といってもいいハイジャック小説。序盤に描かれる計画の巧みさ、中盤のどことなくシュールな流れ、そして終盤のサプライズと文句なし。
 次点にはアシモフのSFミステリを。ロボット三原則をしっかりとミステリに適用した作品。

<国内作品>
1位 山田風太郎『おんな牢秘抄』
2位 法月綸太郎『頼子のために』
3位 土屋隆夫『危険な童話』
次点 芦辺拓『グラン・ギニョール城』

 1位はおなじみ山田風太郎。個々の事件の出来はそれなりといった感じだが、姫君お竜の活躍と全体を覆う仕掛けの上手いこと上手いこと。時代もの活劇ものの傑作でしょう。
 2位はこれまで5冊読んだ法月綸太郎の長編ではベスト。有名な古典を下敷きにしながら、決してそこで終わらせない。登場人物たちの人間関係とミステリとしての構図の絡みも見事だし、ラストも強烈。
 3位は初めて読んだ土屋隆夫作品。個々のトリック自体は割と小粒なのだが、その組み合わせの上手さと隠し方の残酷さが印象的。まさに「危険な童話」というべき作品。
 次点は芦辺拓。作中小説の「グラン・ギニョール城」が黄金時代の香気を感じさせるところに、作者の黄金時代の作品への愛情が感じられて楽しい。ミステリとしてもかなりの出来。