都筑道夫『退職刑事4』

遊びが増えてきた

 短編集。個人的ベストは「あらなんともな」
「連想試験」
 連想ネタダイイングメッセージのような感じの暗号もの。時代が経ちすぎていることもあって分かりにくい。
「夢うらない」
 自白した犯人の夢自体はなんだか怪しげだが、その先に隠されていた真相は説得力、意外性ともに抜群。
「殺人予告」
 妙に詩的だったり、暗号が隠れていたりと、なんだか現実味のない脅迫状が中心になっているためか、やや生彩を欠く。
「あらなんともな」
 結末のない推理小説の結末を推理するという遊び心にあふれた作品。推理自体もミステリを裏側から眺めたようなものがあったりしてなかなか楽しい。
「転居先不明」
 転居先不明の手紙が入った死体が連続して現れるという設定が面白い。事件の繋げ方もなかなか。
「改造拳銃」
 捻り方は悪くないと思うのだが、事件の動機といい、全体のトーンといい、この連作にそぐわないような印象を受ける。
「著者サイン本」
 ありそうな解決を見せておきながら、そこから急展開を見せる。手掛かりの出し方がややアンフェアな気もするが……。
「線香花火」
 「連想試験」と似たような味わいを持った作品だが、こちらは良くできている。乱歩の「心理試験」に通じるものがあると思う。


 遊びの部分が上手くはまるといいのだが、そうでない作品はややチグハグな印象を受ける。★★★★☆