高木彬光『白昼の死角』

痛快な悪党小説

白昼の死角 (光文社文庫)

白昼の死角 (光文社文庫)

あらすじ

 明晰な頭脳にものをいわせ、巧みに法の網の目をくぐる。ありとあらゆる手口で完全犯罪を繰り返す天才的詐欺師、鶴岡七郎の犯罪が描かれる。

感想

 痛快な犯罪小説。
 約束手形を使った詐欺によって大金を稼いでいく男の物語なのだが、一つ一つの犯罪が非常に大胆かつ巧緻である。人間の心理を巧みに操りながら完全犯罪を作り上げていく過程が非常に面白い。
 形式は長編で、物語としては一貫しているが、いくつもの完全犯罪が描かれているので連作のような感じがする。
 また、段々と彼の仲間たちがいなくなり、最後には一人になってしまうというところに、*1妙な哀愁を感じてしまった。
 しかし一番凄いのはこれが全部本当にあったことらしいということ。本当に天才だな。★★★★★

*1:彼自身がまったく感傷的でないのが余計に