クレイグ・ライス『眠りをむさぼりすぎた男』

これがあのライス!?

眠りをむさぼりすぎた男 世界探偵小説全集(10)

眠りをむさぼりすぎた男 世界探偵小説全集(10)

あらすじ

 快活な大金持ちのフランクと嫌われ者のジョージのフォークナー兄弟のパーティーに招かれたマリリー。
 彼女は翌朝、ジョージが寝室で咽喉を掻き切られているのを発見する。
 パーティーに参加した人々は次々とジョージの寝室に入って彼の死体を発見するが、ジョージに握られていた秘密の暴露を恐れて口をつぐむ。
 交錯する思惑と高まるサスペンス。そして一日の終わりに待ち受ける結末とは?

感想

 クレイグ・ライスのマイケル・ヴェニング名義の作品。
 これがあのライスの作品だとは思えないくらいの緊迫感にあふれた雰囲気とトリッキーな構図を持っている。
 恐喝者の死を発見する登場人物が皆、秘密の露見を恐れて口を噤むのだが、彼らの今にもしゃべりそうになる衝動とそれを押さえ込み、沈黙を決心する様子が非常に巧みに描かれていて、物語が進むにつれてサスペンスを盛り上げることに成功している。
 そして、一日の最後に待つサプライズと怒涛の展開から一気に解決になだれ込む部分は非常によくできている。伏線も何気に上手い。ラストの温かさはライスならではか。★★★★★