アガサ・クリスティー『愛国殺人』

本当に上手い

あらすじ

 歯医者での治療を終えて一息ついたポワロに、当の歯医者が自殺したという電話があった。しかし、彼には自殺の兆候は全くなかった。これは巧妙に仕掛けられた殺人なのか? ポワロは独自に調査を開始する。

感想

 クリスティーの上手さが存分に出た快作。
 一見単純な自殺に思える事件が、捜査によって徐々に複雑な容貌を見せる過程は非常に上手いし、スパイや革命家もどきなどの怪しげな人々も次々に登場する。
 使われているトリックは基本的なものなのだが、それを非常に上手く組み合わせて見事な効果を挙げている。そして相変わらずの巧みな伏線とミスディレクション。これぞクリスティーである。ただちょっと展開、登場人物ともパターン化しているといえるかもしれない。★★★★☆