山田風太郎『おんな牢秘抄』

 こりゃべらぼうに面白い!

おんな牢秘抄 (角川文庫 (5664))

おんな牢秘抄 (角川文庫 (5664))

 オムニバス形式のような感じの長編時代ミステリ。ミステリとしての個人的ベストはお葉の事件か。
プロローグ・「お奉行様とその姫君」〜「新入り」
 姫君お竜が誕生する経緯が描かれる。いやしかし、これだけで十分に面白いんだ。
お玉・「玉乗りお玉」〜「蜘蛛を売る浪人」
 トリッキーな構図でありながら、犯人当てとしてもしっかりとしている。
お路・「色指南奉公」〜「生首変化」
 絶体絶命のお竜が最後に見事な逆転を見せる。ミステリとしては、まあ割と分かりやすいか。
お関・「生首変化」〜「八卦八卦知らず」
 新興宗教の起こす奇蹟のトリックはよくある手品だが、事件には意外な捻りが効いている。
お半・「世は情浮名の横町」〜「おんな牢酒盛」
 プロット自体はやや単純だが、それを成立させるためのトリックが素晴らしい。
おせん・「振袖女郎」〜「江戸の何処かで」
 遊廓での事件だが、構図が少し複雑。犯人はすぐ分かるので、ちょっと微妙な気も。
お葉・「蓮ッ葉往生」〜「竜の目ひらく」
 強烈な印象を残すトリックだが、それ以上に、伏線の張り方に上手さを感じる作品。
エピローグ・「女人斬魔剣」
 これまでの事件を見事に結びつけ、さらに江戸を揺るがす大事件に発展させる。そしてラストの剣戟が凄い。


 ミステリとしてはまあまあの良作というところだが、姫君お竜の活躍が痛快で抜群に面白い。大傑作。★★★★★