ドロシー・L・セイヤーズ『死体をどうぞ』

「結婚してくれ」ばっかりだな

死体をどうぞ (創元推理文庫)

死体をどうぞ (創元推理文庫)

あらすじ

 探偵作家のハリエットは、波打ち際にそびえる岩の上で喉を掻き切られた男の死体を発見する。そばには剃刀。そして浜には一筋の足跡しか残っていない。やがて、満潮に乗って死体は海に消えるが……。

感想

 かなり分厚い作品だったが、非常に良くできていると思う。
 容疑者が次々と現れ、そのたびに彼らのアリバイをなんとか崩そうとするピーター卿が苦心惨憺、凝ったアリバイトリックを次々に披露していく所は*1コリン・デクスターのような趣があって非常に楽しめた。
 また、遊び心も満点で、容疑者を列挙するところや暗号解読の場面などは、作者が楽しんで書いているのが良く分かる。
 解決シーンで明かされるプロットは非常に巧緻だが、それが一風変わった、というか変に捻った形で独特の面白さがある。『ナイン・テイラーズ』を越えて作者のベストにしたい。
 しかしウィムジイ、ハリエットに会うたびに「結婚してくれ」と言うのはどうよ(笑)。★★★★★

*1:解説で法月綸太郎氏も書いていたが