パトリシア・マガー『七人のおば』

呆れるほど個性的な伯母・叔母たち

七人のおば (創元推理文庫)

七人のおば (創元推理文庫)

あらすじ

 結婚し渡英したサリーの許へ届いた友人の手紙で、おばが夫を毒殺して自殺したことを知らされた。ところが、彼女にはおばが七人いるのに、肝心の名前が書いてなかった。
 サリーと夫のピーターは、おばたちと暮らした七年間を回想しながら、はたしてどのおばが殺人犯なのか、見当をつけようと試みる。

感想

 七人のおばとの生活を回想しながら、一体誰が夫を殺して自殺したのかを推理する作品。一言で言えばそれだけの作品である。
 だがしかし、この回想が生彩にあふれていて非常に面白い。
 回想の中でおばが七人も登場するのだが、それぞれの性格の描き分けが非常に上手く*1、まったく混乱することなくサクサク読める。この辺りがこの作者の最大の素晴らしさでもある。
 ミステリとしては、やや伏線が薄いものの思わぬところで見事に背負い投げを喰らった。『被害者を捜せ!』とは別の方向で素晴らしい手腕を発揮した快作。★★★★★

*1:ある程度型にはまっている感じもするが