森博嗣『封印再度』

「壺と箱」が秀逸

封印再度 (講談社文庫)

封印再度 (講談社文庫)

あらすじ

 50年前、日本画家・香山風采は息子の林水に家宝「天地の瓢」と「無我の匣」を残して密室の中で謎の死をとげる。
 不思議な言い伝えのある家宝と風采の死の秘密は、未だに解き明かされていない。
 そして今度は、林水が死体となって発見される……

感想

 この事件のメインの謎は二つ。林水の死の謎と「壺と匣」の謎である。
 「壺と匣」の謎とその解決がかなり秀逸。壺の中から出せない鍵、という謎の魅力とその解決の意外性が素晴らしい。
 事件の方も「壺と匣」と絶妙な絡みを持っている上に、プロットの捻り方、思わぬ伏線を見事に回収してみせる手腕が光る。
 犀川と萌絵のラブコメに関してはまったく琴線に触れなかった、というかむしろマイナスだが、ミステリとしては非常に良くできていると思う。タイトルセンスもいい。★★★★★