柄刀一『ifの迷宮』

柄刀版『Yの悲劇』?

ifの迷宮 (光文社文庫)

ifの迷宮 (光文社文庫)

あらすじ

 遺伝子治療や細胞移植を手がける最先端医療企業SOMONグループ。その中核の宗門家で顔と手足を焼かれた女性の死体が発見された。
 警察は捜査を開始するが、現場のDNA鑑定が示したのは「死者が犯人」という有り得ないデータであった……。

感想

 一見有り得ないように思える「死者の甦り」という謎はかなり魅力的。密室も出てくるし、そのトリックもなかなかのもの。
 だが、「死者の甦り」の解決にはちょっと不満がある。医療についてある程度詳しくないと分からないようなトリックがあるのがどうも……。
 あと、近未来における「遺伝子診断」という世界に最後まで入り込めなかった。遺伝子万能説はもちろんだが、知的障害者に対する目線にもあまり共感できなかった。どちらも極端に走っている感じがしてしまう。
 決して出来は悪くないのだが、どうも『Yの悲劇』と似たような雰囲気が好きになれない。★★★☆☆