ジョン・ディクスン・カー『バトラー弁護に立つ』

弁護してないじゃん

バトラー弁護に立つ (ハヤカワ・ミステリ 326)

バトラー弁護に立つ (ハヤカワ・ミステリ 326)

あらすじ

 白い霧がロンドンを覆っていた11月の下旬、プランティス弁護士事務所で、副所長のヒューが許婚のヘレンにからかわれていた。
「あなたは冒険向きよ。こんな退屈な法律事務所にいるよりはね。たとえば、外国訛りの男が現れて『私はトルコの王です……』っていうの」
「馬鹿な、そんなことがあってたまるか!」
 そうヒューが言った時、事務所に奇妙な東洋人が現れた……。

感想

 『疑惑の影』でフェル博士と一緒に活躍した、パトリック・バトラーが単独で登場。
 で、ぶっちゃけて言うと、題名に偽りありである。題名から法廷シーンくらいはあるかと思ったのだが、バトラーは活躍するものの弁護士として働くことはほとんどなく*1、むしろ「バトラー冒険する」とでも言ったほうがいい作品。
 主人公のヒューとバトラーの冒険、そして二人の女性を巡るロマンスは非常に面白いが、肝心の密室殺人の扱いが軽いし、その真相も拍子抜けといった感じ。ただ、伏線の巧さは流石カーといったところか。カー好きとしてのおまけをちょっと入れて★★★★☆

*1:というか皆無だ