ジョン・ディクスン・カー『月明かりの闇』

 フェル博士「最後の」事件

あらすじ

 死体は広々とした砂浜の真ん中に倒れていた。濡れた砂には、鈍器で殴られた被害者の足跡しかない。
 百年前に起きた謎の惨劇が現代に再現された。この不可能犯罪にフェル博士が挑む。

感想

 これがフェル博士最後の事件である。とはいえポワロやモースのように特別な何かがあるわけではなく、普通の不可能犯罪ものだ。取りあえず順番が「最後」というだけ、というわけだ。
 その不可能犯罪のトリックはかなり分かりやすく、ちょっと拍子抜けである。
 というわけで、やはりメインはフェル博士の後期作品によくある人物関係の捻り。これはなかなかよくできている。
 また何度も現れる海賊からのメッセージは、初期作品のような怪奇性はほとんど感じられない*1ものの、その真相は捻りが効いていて非常に面白かった。
 最後の事件、ということでちょっとおまけして★★★★☆

*1:カーが意図してそうしたのか、筆力が衰えたためかは分からないが