横溝正史『蝶々殺人事件』

 練りに練られた傑作だ

蝶々殺人事件 (角川文庫 緑 304-9)

蝶々殺人事件 (角川文庫 緑 304-9)

あらすじ

 原さくら歌劇団の主宰者、原さくらが「蝶々夫人」の大阪公演を前に姿を消した。数日後、彼女は死体となってバラと共にコントラバスのケースから発見される。
 次々と起こる事件にはどんな秘密が隠されているのか?

感想

 由利先生シリーズの第一作ということで、怪奇やサスペンスはほとんどなく、探偵小説らしさを前面に出した作品になっている。中心となるトリックは非常によく考え抜かれているし、それ以外にも細かい事件をいくつも用意して、その中にミスディレクションや伏線を埋め込んであるのが素晴らしい。凝りに凝った傑作。★★★★★


 以下はこの本に収められた短編について。
「蜘蛛と百合」妖しい美女を中心としたサスペンス。ラストの真相が恐ろしい。
「薔薇と鬱金香」序盤のホワットダニットのような展開、中盤の決闘シーンなど、サスペンスを前面に出した作品。謎解きは少々物足りない。