アイザック・アシモフ『黒後家蜘蛛の会5』

 これが最終巻(涙)

黒後家蜘蛛の会〈5〉 (創元推理文庫)

黒後家蜘蛛の会〈5〉 (創元推理文庫)

 「黒後家蜘蛛の会」第五集。個人的ベストは「水上の夕映え」
「同音異義」
 このシリーズは語学と科学の雑学ネタが異様に多い。それだけ作者が雑学を溜め込んでいるということだろうが。これは語学ネタ。
「目の付けどころ」
 これまた雑学ネタ。しかも科学。アシモフ得意のパターンだ。
「幸運のお守り」
 この中では珍しくミステリっぽいトリックが使われている。しかも結構凝ったトリックだ。
「三重の悪魔」
 知らなきゃ分からない本の題名だが、さり気なく伏線も張ってあったりしてそれなりに丁寧。楽屋落ちのネタには笑った。
「水上の夕映え」
 これは素晴らしい作品。ちょっとした心理的な盲点を見事に突いている。
「待てど暮らせど」
 らしいといえばらしい、そしてアンフェアだといえばアンフェアな小噺。
「ひったくり」
 伏線をきっちりと回収したり、ちょっと意外な目のつけどころがあったりして面白い。
「静かな場所」
 再び雑学ネタ。とはいえダーク・ホースの定義は今や常識となってるので少し古い気もする。
四葉のクローバー」
 科学系雑学ネタ。おまけに話が飛びすぎでちょっと無理矢理感が漂います。
「封筒」
 これはネタが読めてしまった。日本とアメリカの文化の違いもあるので、日本人なら割と簡単に読めるのではないか。
「アリバイ」
 アリバイをどうやって破ったか。一風変わったハウダニットの設定が面白い。
「秘伝」
 珍しい密室もの。設定の奇抜さも目を引くし、トリックもテクニカルで丁寧に作られていると思う。


 ミステリとしての出来は決して良くない。でも、これで終わってしまうと思うと寂しい一冊。
 巻末の有栖川有栖の解説がいい味です。★★★☆☆