S・S・ヴァン・ダイン『ケンネル殺人事件』

 密室なんて刺身のツマみたいなもんだ

ケンネル殺人事件 (創元推理文庫 103-6)

ケンネル殺人事件 (創元推理文庫 103-6)

あらすじ

 密室に鍵をかけて自殺していた男。それを殺人と看破したファイロ・ヴァンスは中国の陶器とスコッチテリアを手掛かりに不可解な犯罪に挑む。誰もが怪しく、また怪しくない状況の中、ヴァンスは明晰な推理を展開する。

感想

 ヴァン・ダインの第六長編。
 一応序盤に密室殺人の謎が出てはくるのだが、ガチガチの機械トリックである上に早々にヴァンスによって明かされるので、ここにそれほどの面白みはない。
 むしろこの作品のメインは不自然な点が続出する殺人自体の問題だろう。現場、凶器、痕跡などの不自然さを指摘しながらヴァンスが推理を進めていくシーンはなかなか面白い。
 解決だが、ホワットダニットのような謎の解決自体はよくできている。しかし、犯人指摘に論理性が乏しかったり、事件の終わらせ方がイマイチすっきりしなかったりで、最後にミソをつけすぎた感じがする。なので結局★★★☆☆